葬儀費用等について
- 2022.06.06
Q
母親が亡くなり(父親は母親より以前に亡くなっています)、長男である兄、長女である私、次男である弟が相続人となりました。母親の葬儀は、兄が喪主となり、その後四十九日の法要、納骨も行われました。
兄は、母親の葬儀費用等(今後行われる一周忌、三回忌の法要の費用を含め)、相続人3人で平等に負担するべきだと言っています。ただ、母親の葬儀の内容等については、兄が私や弟に相談もなく、勝手に決めており、3人で平等に負担することに違和感があります。
遺言書があるかどうかもまだわからず、今後、母親の遺産を分割する話し合いを行うこととなりますが、この葬儀費用等も遺産分割の話し合いで解決していくものでしょうか?
A
葬儀費用等は、母親が亡くなった後(相続開始後)に発生する債務ですので、遺産とは別であり、葬儀費用等をめぐる問題は、法的には遺産分割の対象事項ではありません。もっとも、相続人間で合意すれば、遺産分割の話し合いや調停手続きの中で併せて解決することもできます。
葬儀費用等の負担者や負担割合については、多くの場合、相続人間の話し合い(若しくは黙示の合意)で決まることが多いと感じていますが、争いになることがあります。
話し合いでの解決ができず、裁判となった場合、法律上明確に葬儀費用等を負担すべき者を条文で定めていないため、裁判官が個別の事情に基づき判断することとなります。過去の裁判例等では、喪主を務めた者が負担すると判断されたものが多数散見されますが、一律に判断されている訳ではなく個別の事情を総合的に判断されています。
例えば、遺言書に法定相続分より大きい割合の相続分を指示された記載のある者が喪主を務めた事案において「亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合には、葬儀の主宰者である喪主が、その規模をどの程度にし、どれだけの費用をかけるかについて最終的にその責任において決定し、葬儀を実施するものであることから、喪主が葬儀費用を負担する」べきであると判断した裁判例があります(東京地裁平成27年12月3日)。この裁判例では明確に「遺言書に法定相続分より大きい割合の相続分が記載されていた」ことを判断の根拠としたとは記載されていませんが、当該事情を判断の考慮要素にしているものと考えられます。他の裁判例ですが、被相続人の死亡保険金の受取人に指定されていた事情を考慮して葬儀費用を喪主の負担とすべきと判断した裁判例もあります(神戸家審平成11年4月30日)。
このように、葬儀費用等の負担に争いが生じた場合には、個別事情によって判断が変わってくる場合もありますので、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。