遺産分割の協議前弟が勝手に遺産を処分しました。処分した財産は遺産分割協議の対象ですか?
- 2021.09.21
Q
父が亡くなり、相続人は、私と弟で、遺産は、自宅と預貯金、株式などがあります。
遺産分割の協議前に、弟が勝手に株式を売ってしまっていました。この株式について、遺産分割協議の対象とすることができますか。
A
新民法906条の2により、他の相続人全員の同意があれば、遺産分割の協議の前に処分した財産も遺産分割の対象とできます。もっとも、相続人が2人しかおらず、一方が財産を処分していた場合、その相続人の同意は不要です。
今回のケースでは、弟さんの同意なしに、株式を遺産分割の対象とすることができます。なお、新民法906条の2の「処分」とは、預貯金の払い戻し、貴金属等の売却、物理的な毀損、滅失行為も含むとされています。
また、処分の主体は、共同相続人に限られません。第三者(例えば、共同相続人の妻子など)が処分した場合にも、全相続人の同意で、その財産を遺産分割対象財産に入れて、分割協議ができます。
ただ、もし、一部の共同相続人が同意しなかった場合は、各相続人が遺産に属する財産を処分した者に対して、法定相続分に従って、不法行為又は不当利得に基づく請求をすることになります。
(執筆者・大野)
この記事を担当した弁護士
弁護士法人かばしま法律事務所
パートナー弁護士
大野 智恵美
保有資格
専門分野相続
経歴福岡県直方市出身
熊本大学法学部卒業
西南学院大学法科大学院
司法試験合格
弁護士登録(福岡県弁護士会)