不動産の分割に争いがある場合、先に株式や預金など分割することができますか。
- 2021.09.21
Q
父が亡くなりました。相続人は、母と私(長女)と三人の弟たちの、合計5人です。
父の相続財産は、株式、預金、自動車、他人への貸金返還請求権、複数の不動産など、多岐にわたります。弟たちは既に地元を離れて東京や大阪に出ていますし、私も夫の家に嫁いでいますので、不動産を誰が取得して守っていくのか、ということで長く揉めそうです。売るにしてもすぐに売れる土地じゃありませんし・・・。
このような場合、株式や預金、自動車など、お金に換えやすいものについてだけ、先に分けてしまうことは、できないのでしょうか。
A
できます。
そのように、相続財産のうち、先に一部だけについて遺産分割協議をすることを、「一部分割」と言います。
相続法が改正される以前から、実際に一部分割は行われていたのですが、これを許容する明文の規定は存在しませんでした。
そこで、今回、相続法が改正されるタイミングで、これを許容することを明示するために条文が置かれることになりました(民法第907条)。
また、当事者でかかる「一部」についての分割の話がついているときにのみ一部分割が可能、というわけではなく、最初から相続財産の特定の一部についてのみ、分割方法を定めるべく調停ないし審判を求めて、家庭裁判所に申立を行うことも、明文で認められることになりました。
相続財産が多い場合、どの財産の分割方法で揉めているのか混乱してしまい、全く遺産分割協議が進まない、ということもよくございます。一つ一つ決着をつけていくと、案外早期に話がまとまることもございます。「相続財産は多いけど、この部分についてはもう話がついているんだよなぁ・・・」等といった場合は、是非一部分割を積極的にご活用ください