父の口座が凍結され、葬式代の支払いができておりません。どうすればいいでしょうか?
- 2021.09.21
Q
父が急に交通事故で亡くなりました。相続人は、母と私(長女)と弟の合計3人です。
父は亭主関白なところがあり、自分の給料は自分名義の口座に入れて管理をしていて、母には必要な生活費だけを渡していましたので、母に十分な手持ちのお金がない中、父の口座は凍結されてしまいました。父の葬式を代金後払いで執り行ったのですが、その費用負担について、母と私と弟でもめており、式後1か月経った今も支払いができておりません。このような状況だと遺産分割自体も長引きそうなのです。通帳の記載によると父には預金は3000万円があります。
まずはなんとか葬式代の支払いをここから充てることができないでしょうか。
A
150万円までの範囲であれば、できます。
平成28年12月19日の最高裁判所による決定で、相続財産に含まれる預金債権も他の債権と同様、遺産分割協議が成立するまでは相続人は権利行使できない(払い戻しを受けることができない)ことが、決められました
ですので、ご質問のケースであっても、たとえお父様の預金債権があったとしても、それを行使できるのは、他の相続財産も含め、遺産分割協議が成立してから(もしくは預金債権についての一部分割協議が成立してから)というのが原則です。
しかし、その例外として、民法909条の2は、相続人に、預金債権の相続人による単独行使を認めています。つまり、あなたの相続人という立場で、他の相続人の同意を得ることなく、預金の払い戻しを受けることができるのです。
もっとも、その上限は、①相続開始時の預貯金債権の債権額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額で、かつ、②150万円を超えない額、とされています。
つまり、あなたの場合は、①によるとお父様の預金の3000万円の3分の1である1000万円に、あなたの相続分である4分の1を乗じた金額である、金250万円の払い戻しを受けることができそうですが、②の条件により、その上限は150万円となります。
以上から、150万円までであれば、あなたはすぐに銀行から払い戻しを受けて、それを葬式代に充てることができます。