遺留分制度は具体的にどう変わりましたか
- 2021.09.21
A
架空の事例を挙げて考えてみます。
A蔵が死亡し、相続人は妻のX子(法定相続分2分の1)、長男のY助(法定相続分4分の1)、次男のZ太郎(法定相続分4分の1)の三名です。
A蔵には相続財産は遺贈された分を除いてはゼロであり、死亡する11年前に長男Y助に7500万円の土地・建物を贈与しました。また、A蔵の友人の娘のW美に4500万円の土地の遺贈をしています。
遺留分についての請求をするとします。
(改正前)
遺留分算定のための財産の価格 | W美への遺贈の4500万円 Y助への贈与7500万円 合計:1億2000万円 |
遺留分侵害額 | X子について、 1億2000万円×1/2×1/2 =3000万円 Z太郎について 1億2000万円×1/2×1/4 =1500万円 |
X子が遺留分減殺をした場合 | W美の遺贈につき、X子の遺留分を侵害する限度で無効になり、土地は、X子とW美が2:1の割合で共有になる。 |
Z太郎が遺留分減殺をした場合 | W美の遺贈につき、Z太郎の遺留分を侵害する限度で無効になり、土地は、Z太郎とW美が1:2の割合で、共有になる。 |
X子とZ太郎双方が減殺請求をした場合 | W美の遺贈全部が無効になり、Z太郎とX子が1:2の割合で、共有になる |
(改正後)
遺留分算定のための財産の価格 | W美への遺贈4500万円 ➣相続人への贈与について、相続開始の10年前のものに限定された。 |
遺留分侵害額 | X子の遺留分侵害額 4500×1/2×1/2 =1125万円 Z太郎の遺留分侵害額 4500万円×1/2×1/4 =562万5000円 |
結果 | X子はW美に1125万円の支払いを求めることができる。 Z太郎はW美に562万5000円の支払いを求めることができる ➣金銭の支払い請求ができるようになった。 |
※ポイント
遺留分算定のための財産の価格の計算について、相続人に対する生前贈与を対象とする場合は、期間制限なし→相続開始10年以内の贈与に限定された。
結果について、不動産について、共有になるという結果から、金銭の支払い請求ができるようになった。