遺産分割問題解決の流れ
さて、相続が発生して、遺産分割を行う場合、大きく分けると2つの流れがあります。
相続発生 → 遺言がある場合 原則として、遺言に沿って相続する
→ 遺言がない場合 相続人間で、遺産分割協書を作成の上、相続する
遺言がある場合
被相続人の遺言がある場合は、原則として、遺言に沿って相続を行います。 しかし、遺言書に、作成された日付が記載されていない等の形式的不備がある場合や、筆跡や当時の被相続人の精神状態からして本人が書いたものとはいえない場合などには、遺言の効力が認められないことがあります。 |
また、例えば、兄弟が3人いるのに「長男に全てを相続させる」というような場合には、他の兄弟2人は遺留分(遺言によっても奪われない、相続人の相続分)を侵害されることになりますので、長男に対して、遺留分減殺請求を行うことができます。
遺言がある場合で、その有効性に疑いがある場合、内容に納得がいかない場合には、専門家である弁護士にご相談ください。
仮に遺言によって、遺留分が侵害されている場合でも、遺留分を減殺請求するには期限があり、その期限を過ぎて放置すると、請求が認められなくなりますので、ご注意ください。具体的には、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、もしくは、相続開始の時から10年を経過したときには、時効により消滅することとなります。
遺言がない場合
被相続人の遺言がない場合には、法律によって定められた相続人(法定相続人)全員による、遺産分割協議書を作成することになります。
遺産分割協議書がなければ、被相続人の預金を引き出す等の、被相続人の財産を相続する手続きを行うことができません。 この場合の遺産分割の流れは次のようになります。 |
1.相続調査 → 2.遺産分割協議 → 3.遺産分割調停 → 4.審判 → 5.遺産分割訴訟
1.相続調査
遺産分割協議に当っては、相続人(法定相続人)と相続財産の確定が必要です。相続人の戸籍謄本の収集や、相続財産の目録を作成します。
遺産分割協議は、相続人全員の合意があってはじめて成立しますので、遺産分割協議が終了後に新たな相続人が見つかった場合などは、当該遺産分割協議は無効になってしまいます。
当該相続について、相続人が何人いて、それが誰であるのかは、十分に把握しておく必要があります。
相続人の範囲について、把握漏れがある可能性がある場合は、あらかじめ、専門家である弁護士に相続調査を頼んだほうが良いでしょう。
2.遺産分割協議
相続調査によって、相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。これは、相続人による話し合いです。話し合いがまとまった場合は、その内容にもとづいて、遺産分割協議書を作成し、これによって不動産の名義の変更や預金等の分配等の相続手続を行います。
後々の紛争の蒸し返しを防ぐためにも、遺産分割協議書の作成については配慮すべき箇所が多々あり(遺産分割協議後に判明した相続財産の処理についての取り決め等)、その作成は専門家である弁護士に依頼をすることをおすすめいたします。
3.遺産分割調停
相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。
調停とは、簡単に言うと、調停委員を仲介者とした交渉です。調停になった場合は、双方に弁護士がつく場合が多いと言えます。
当事者同士の調停の場合、調停の席でも感情的な意見や言い分に終始してしまい話が進展しないことも多々あります。弁護士が代理人として就任した場合、法的に意味のある主張に絞ることができ、無用な争いを避け、調停での話し合いの迅速な進行をはかることが可能になります。
4.審判
調停が不調(不成立)になった場合、審判の手続きに移行します。審判では、裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、審判を下します。審判に不服がある場合は、2週間以内に高等裁判所へ抗告する必要があります。
5.訴訟
遺産分割の前提となる法定相続人の範囲や、相続財産の範囲、遺言の有効性などに関して争いがある場合は、調停などで話し合いを重ねても平行線を辿ってしまいますので、訴訟を提起する必要があります。訴訟の場合は、殆どの場合、双方に代理人の弁護士がつくことになります。
まとめ
遺産分割を行う場合、特に揉めている場合や、揉める可能性がある場合は、上記の解決までの全体像を見越した上で、最適な解決方法を考える必要があります。 |
話し合いで解決するほうが有利になるのか、訴訟を提起したほうが良いのか、あなたの状況によって、ケースバイケースです。
当然、弁護士にご相談いただく場合には、これらの全体像を踏まえて、最適な解決方法をアドバイスさせて頂きます。